「その傷だったら源泉館へ行きなさい」
長野県伊那市 Hさん
南へ走る身延線の列車の中で隣席のお爺さんが言った。「その傷だったら源泉館へ行きなさい」。束の間の会話から私は天下の名湯、信玄公のかくし湯源泉館にお世話になる機会に恵まれた。
早速入浴の私が混浴とも知らず浴室にて大慌て、そして冷泉とも知らずに岩風呂に入り「寒い」の連発、数分にて退散、秋風の入浴初日から、傷男がその試練を受けた。辛さに耐えて怪我を省みていた。
トラックを運転中の私が交通事故により意識を失い救急車で運ばれたが、私の車は大破し、頭、顔等が血で染まり悲惨であったという。度かの神泉入浴の湯治効果により、幾負傷も癒え元気が蘇ってきた。怪我をするたびに、そそっかしい自己反省と共に、岩風呂の神泉に身を清めるのであった。
お陰様にて古稀を越えた私が仙丈岳(3033m)等の山頂に立ったり、国内外の旅にも妻と共に巡る体力も快復した。今、感謝しながら爺ちゃになった私は自信をもって言います。「その傷だったら源泉館へ行きなさい」